くるくる巻いて、束ねて、飾って。吉野杉の「面皮」で作るアートの世界。
株式会社 花井商店 花井 慶子さん
吉野杉の年輪に刀を入れ、一枚一枚手作業で剥きとられる面皮。薄いけれど美しい自然の艶としなやかさ。さして、長い樹齢をもつ吉野杉の一年の歴史がそこにはあります。良質な木材を産出してきた下市町の製材会社で生まれ育った花井慶子さんは、この面皮を作品に仕立て上げる唯一のアーティストです。アートとしては珍しい面皮から作品が生まれた経緯や想いなどについてお聞きしました。
B品を活かすSDGsな飾り物。
「小さい時、女の子に『将来、何になりたい?』って聞いたらよく『ケーキ屋さん』とか『幼稚園の先生』とか答えるじゃないですか。たぶん私は、『お花屋さん』って言ってたと思います。面皮って曲がるし、お花の形にできないかなあと思って10年くらい前にちょっと曲げてみようかしらとやってみたのが始まりです」花井商店の花井慶子さんは面皮でアクセサリーや髪飾りなどの小物やオブジェを製作・販売するアーティスト活動を行っている。
「もったいない」をアートに昇華
面皮とは、吉野杉の年輪を一枚一枚手作業で剥ぎ取った木材のことだ。「実は面皮の細工はB品の木材でやっているんですけど、それまでB品はほとんど廃棄対象で焼却していたんです」製材会社で生まれ育った花井さんだが、実家の仕事はあまり興味がなかったそうだ。しかし、ある時、人の手が足りなくなり急遽工場に入ることになった。「現場の仕事をするようになって、すごく廃棄されるものが多いことに気付きました。やっぱり自分でやってたら、B品であっても木材を捨てるのって嫌じゃないですか」
下市町の産物の魅力を伝える
元々、クラフトや手芸が好きだったという花井さんは展示会やワークショップなど機会があるごとに意欲的に出展している。「展示会は最近、大竹君(下市木工舎「市」)とやったところです。私は機械を使った加工が得意じゃないので、そういう作業の時は大竹君に専ら助けてもらっています。ワークショップとかは、県外に行くこともあるので、下市町のことや吉野杉や林業などについて興味を持っていただけるようにお話させていただいています」
面皮が広げる新しい世界
年輪を一枚一枚剝ぎ取った面皮は、木材の強くて、硬くて、きれいでピカピカな部分だ。そして年輪だから一本の木から何個も取れる。花井さんは、この年輪の幅でモチーフを選んでいるのだとか。面皮は一枚一枚曲がり方や硬さが違うので、触ってみて曲げてみて木の性質を見ながら作る。意図的に幅を細くする必要があるときには製材工場の方に対応してもらうことも。「小物にしたいから細くしてくれ!みたいな。そうすると展示会をしたら工場のおっちゃんとかも見に来てくれるんです(笑)」
まだ、もっと大きな作品を
「だんだんと作品が大きくなってきて、でもまだ、もっと大きな作品を作っていきたいのですが、展示会があるたびに家の中が作品で溢れた状態になるじゃないですか。だからいつも父に片付けろ!って怒られています。でも、よそでは『うちの娘がなぁ〜』って自慢してるらしいです(笑)」
体験コンテンツ
吉野杉の面皮で木を身近に感じる オリジナルリース/オブジェづくり
杉の年輪に刀を入れて一枚一枚手作業で剝ぎ取った杉の面皮(めんかわ)を曲げて、「リース」あるいは、「かたつむりのオブジェ」を製作いただけます。飾りつけに、プリザーブドフラワーや吉野杉の葉っぱ、カラフルなリボンや毛糸などを用意しています。
吉野材の製材所 吉野杉の面皮細工も製作
株式会社 花井商店