素材を活かす吉野杉で作るポップ&クールな小物たち。
下市木工舎「市」 大竹 洋海さん
2014年、「鉋仕上げ」を提唱する兵庫県三木市の木工芸家の徳永順男氏の全面協力によって開かれた「下市木工舎『市』」。そして、その徳永氏の仕事に憧れ、研修生としてやってきたのが大竹洋海さん。今、大竹さんは、ここで学んだ鉋の技術と吉野杉材との出会い、作家仲間とのコラボレーションによって日々進化を遂げる木工作家の一人だ。純朴なルックスに創作熱を隠した大竹さんの木工への想いをお聞きしました。
木工作品との出会いは突然に
大竹洋海さんは現在28歳。若いが下市木工舎「市」の代表である。大竹さんを木工の世界に誘ったのは、彼が北海道で高校生だった頃、本屋で立ち読みしていた雑誌に載っていた椅子の写真だった。稲妻が走った。しばらくそれは脳内に残像として染み付いて取れなくなった。そしてある日、思い立って椅子の作家の門戸を叩く。「行けるんだったら大学を出てからおいでといわれました。それで4年間、北海道大学の農学部の森林科学科で林業政策などについて勉強していました」
家具から小物へ。
大学を卒業した後に晴れて木工の世界に飛び込んだ大竹さんは兵庫県の家具工房に弟子入りして修行した。その後、ここ下市木工舎「市」に研修生として従事し、数年のうちにこの工房を引き継いだ(なお、大竹さんは「木工 森」の森氏の弟弟子でもある)。「最初は師匠がデザインした定番商品を作っていました。テーブルや椅子など家具が中心でしたが、だんだんと自分がデザインしたもの、特に小物を作りたくなって、今はそちらにシフトしています」
作家同士で切磋琢磨
大竹さんが作る木工の小物は器や照明が多い。ポップでクール。相反する性質を兼ね備えた作風は下市にやってきてから何かと世話を焼いてくれる花井商店の花井さんの影響もあると認める。「花井さんが手掛ける面皮細工や透かし彫りの技が造形的にすごく面白いので照明を作ってそれに使ったりしてます」大竹さんと花井さんは共同で個展を開くなど、ともに木工の技術を磨いている。
広がる吉野杉材の木工の振り幅
もともと木材に対するこだわりはなかった。しかし、この工房が吉野杉に特化した工房だったことから、取り扱ううちに吉野杉で作る木工の可能性の振り幅に気付いた。世間でよく言われる吉野杉の美しさだけでなく、それ以外に加工の面での特殊性を知ることができ、木工作家としての伸びしろも増幅したようだ。「最近は漆を取り入れて明るく楽しくなれる食器なども製作しています。吉野杉の美しさを従来と違った側面から表現できることが今はとても楽しいです。技法も新しいものをどんどん取り入れて、それが私の作品の特徴になればいいなと思っています」
木と暮らす豊かな日々を届ける家具製作を行う工房
下市木工舎「市」
大竹 洋海
奈良県吉野郡下市町阿知賀61
近鉄下市口駅から奈良交通バス西迎院前下車、徒歩10分
京奈和自動車道 御所南ICから車で25分