木工 森

木工 森 森 幸太郎さん

森幸太郎さんの作る吉野杉材を活かした家具は、曲線美が魅力。南京鉋や四方反り鉋といった大小様々な鉋を使い独自の形状を追求しています。紆余曲折を経てもともと好きなものづくりの道へ入り、下市で工房を開設しました。森さんのイスは、座面やアームの風合いが絶妙で「木の固いイメージを覆される」とその座り心地が絶賛されています。将来的には自身の作品を海外に広め、日本のモノづくりの魅力を発信したいと話す森さんに、家具作りにかける思いをお聞きしました。

森幸太郎さんがつくるアームチェアは、とりわけアームの曲線が持ち味だ。座面のなめらかな曲線、アームの高さとカーブの風合いは絶妙で、いつまでも座り続けたくなる。森さんに形状が異なるたくさんの鉋を見せていただいた。「鉋は基本的に手作りですが、刃の部分だけ鍛冶屋さんから購入しています」通常、大工が使うのはまっすぐの板を平らにするためのもの。しかし森さんは「南京鉋」や丸い刃の「四方反り鉋」を使って座面やアームの曲面を削り出していく。

もともとモノづくりが好きだった森さんは、大学を卒業後に一般企業に就職していたが30歳前に辞め、ワーキングホリデーを利用してニュージーランドへ。その時は土木工事を体験し、仕事としてモノづくりを意識した。その後、奈良の職業訓練の学校に通い木工の道へ。兵庫県の師匠のもとで3年半修行。その間に「吉野杉を使ってデスクを作ってほしい」という依頼が舞い込んだ。しかし、本来、杉材は家具を作るときメインで使う材ではないのだとか。「初めて使う吉野杉は、材料がすごくきれいで驚きました。奈良の吉野杉は何百年も続く歴史があって、家具の材料としてすごく魅力を感じました。だから、その流れで吉野に工房を作ってモノづくりしたら面白いんちゃうか、という話をきっかけに下市町にやって来ました」

現在、森さんはInstagramでの発信に力を入れている。最近では、個人からの注文だけでなく、設計事務所からの依頼も来るようになってきた。「ホームページがないので、そこが唯一の営業ツールという側面もありますが(笑)海外からも注文があります。これは、鉋などの日本の木工道具が、海外で木工をしている人からすると凄い憧れの道具であることに由来するようです」日本の優れた木工の技術や接手などの技法を勉強したい人や作りたい人が世界中にたくさんいて、森さんの美しい鉋仕上げの家具に魅了されたフォロワーが海の向こうから発注してくるというわけだ。

椅子を作るときの森さんのこだわりは、一番に「座り心地」である。多くの木工家具で使用される楢の木は頑丈ではあるが、ともすれば固くて冷たい印象が否めない。しかし吉野杉は柔らかいので、座ったとき明らかに違いがわかると森さんは言う。「『木の椅子のイメージを覆される』という声をよくいただきます。また、実際に座ったとき「あっ」と絶句して、すぐ『すごい!』と感動されます。吉野杉ってこんな座り心地になるんや、て人が多いです。もちろん鉋での曲面も大きな要因ですよ」

「今後は自分の作品を国内外に発信することで、先人たちが培ってきた日本の木工技術や吉野の木の良さが広がっていくといいなと思います。自分が「いいと思うもの」を作り続けていきたい。あとはたまにはちょっと遊んだ面白いものも(笑)」

吉野杉を材料に鉋を用いた家具製作を行う工房
木工 森

名前

森 幸太郎

場所

奈良県吉野郡下市町伃邑492-1

アクセス

近鉄下市口駅から奈良交通バス岩森(下市温泉)下車、徒歩20 分
京奈和自動車道 御所南ICから車で35分