高野家具

高野家具 高野大輔さん
杉皮のアートボードの前で高野さんが杉皮を手に笑顔で立っている写真

広橋梅林は月ヶ瀬、賀名生と並ぶ奈良県の三大梅林のひとつ。そのほど近くに構えられた工房「高野家具」。代表の高野大輔さんは、前職はグラフィックデザイナー、転じて別注家具職人。銘木店でたまたま見かけた杉皮との出会いから、自然の風合いをいかした様々なユニークな家具や純粋にアートとして楽しめる作品を生み出しています。高野さんの仕事、杉皮との出会いや想いについてお聞きしました。

「平面から立体的な仕事に変わったって感じですかね。独立したのは8年前ぐらい。普段は店舗家具がメインです」高野大輔さんの前職は、広告制作会社でグラフィックデザインやWebデザインをしていたのだとか。それがいつの頃からか趣味で日曜大工的にやっていた木工の魅力に取りつかれ、和歌山の職業訓練学校を卒業後、店舗家具の木工所に勤めたのち、独立した。現在、店舗家具のオーダーに応える生活の傍ら、オリジナルの作品として取り組んでいるのが杉皮を使った家具の製作だ。

「ごつごつしたところですね。優しい感じでは全然なくて、力強い。立体的で溝の深いのがいいですね。そこが杉皮のいちばんの魅力です」試作第一弾は、巨大なサイドボードで収納の扉に杉皮を使った作品。奈良県の支援事業でシンガポールに出展したとき、現地で好評を得て実際に引き合いもあった。「杉皮の作品を作るようになって、興味を持っていただいた方には熱い評価をいただいています。感覚的には海外の方が多いかな。近々、国内の展示会に出展予定なので、反応が楽しみです」

「屋根の下地に使ったり造園の塀に使ったり役割は昔からありました。この辺りならまだ銘木屋さんが在庫をちゃんと持って、いつでも出せるようにされていますが、少しずつ減っているようです」杉皮という素材は、昔からあった素材だが、現在では吉野周辺地域でしか作られていないらしい。そんななか、高野さんは銘木業者が剥いだ杉皮を仕入れて作品作りをしている。「杉皮の採取は、夏場いちばん暑いときに木がいっぱい水を吸ってみずみずしい時にしか綺麗に剥けない。だから木を倒して山の中ですぐに剥くんですけど、急斜面の山の中で積み重ねてビニールシートで囲んで1〜2か月、山に置いておきます。そしたら中で発酵して熱で殺虫できるそうです」過酷な仕事ゆえ、技術者は減りつつあり、需要が増える見込みもあまりないのだとか。そういう意味では高野さんの取り組みは需要の創出に一翼を担っているといえないだろうか。

「この作品は円筒を寝かせて半分に割って宝箱のように作った上から杉皮を貼っています。まだ完成形ではないので、アート作品と思っていただけたらいいです。大型のアートボードは絵画として作っていきたいと思います。内輪では評判も上々ですし自分としても気に入っていますが、まだまだ世に出しきれてないので、頑張って継続してれば開かれるんじゃないかと思っています。評価はともかく、アイデアはなるべく形にして見てもらうことを続けていきたいですね」

吉野杉の杉皮を取り入れた家具製作を行う工房
高野家具

名前

高野 大輔

場所

奈良県吉野郡下市町広橋972

アクセス

近鉄下市口駅から奈良交通バス庄屋辻下車、徒歩すぐ
京奈和自動車道 御所南ICから車で40 分